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氷華血鎖【鳴門】

第20章 一部・邂逅


午前中とは違い忍装束で移動するチヅルの移動速度はかなり早い。あっという間に里周辺に到着する。村を出て四半刻も経過はしてないだろうが陽はだいぶ傾いて来て空は紫と茜色のグラデーション。



『移動中、大した気配は感じられなかった…と言ってもアタシは感知タイプじゃないから、どうやって探すかなぁ…宿を回るにしてもこの国は観光地だから宿の数も馬鹿じゃないし』



木陰から街を見下ろすチヅルは般若の面をしているから、どんな表情をしてるのかは分からない。ただ、コレだけは分かる。マツの記憶の人物を消そうとしている事くらいは。



「殺気立つのは珍しいな」

『………、精算しなきゃいけないから』

「精算?」

『………生きてるのよ。腹違いの兄弟が』



やはりか。
聞けば大蛇丸が抜けた集会の後に知ったと言う。始めは疑って止まなかったそうだ。だがそれは事実でどっちが生きてて或いは両方生きてるか、と言うのは分からないらしい。そして結界をすり抜け双子や鬼鮫と接触した人物は父の側室と大層似てたそうだ。



『正直、アイツ等がどんな風貌だったかあまり覚えてないし五年くらい経ってるし見た目も変わってると思うけど…兄か弟かのどっちかだとは思う』



無論、向こうはチヅルが生きてるのは知っているし寧ろ殺されかけたのだからチヅルを恨み命を狙って来るのは間違いが無い…となると矛盾の点が一つ。もしチヅルの命を狙ってるのだとしたら結界をすり抜けられるハズが無いのだ。



『そう。そこが疑問点。だから確かめなきゃいけない』





※※※





里に入ってからは取り敢えず虱潰しに宿を一軒一軒回る…がまぁ観光地である湯の国は宿なんて腐る程あるし正直途方に暮れる。



「んもぅ…ええ男やのにいけずな方やったわぁ」

「せやなぁ…でもウチはお兄さんの方が好みや」

「旅人言わはってたけど、また来てくれはるやろか?」



ふと歓楽街に歩いて行く若い女性のグループに目が行く。着崩した着物。高さのあるぽっくり。独特の喋り方。遊廓の女性達だと言うのが分かる。



「お名前なんて言ってたやろか?」

「えーと…確かシズ…シズ…」

「シズルはん!」

『!!!』



同じ歳の弟の名前。同名異人かも知れないが僅かな情報だ。探る価値はありそうと判断する。
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