• テキストサイズ

キミのとなりで【気象系BL】

第3章 手紙


ーSsideー


放課後になってもカズの決意は変わらなかった。

2人で裏庭に向かうが、カズはどんどん青ざめていく。

ぎゅっと唇を噛み締めて、拳をきつく握って、何かに必死に耐えるような顔をしていて。

痛々しいくらいの様子に堪らなくなって、そっとカズの震える手に触れた。

カズは何も言わなかったけど、固く握っていた拳を開くと俺の手に重ねてくれる。

包み込むように握ったら、カズの強ばっていた顔が少しだけ和らいだような気がした。

やっぱり無理にでも付いてきて良かった。
こんなカズを1人で行かせるなんて出来ないよ。

本当は今からでもやめようって、もう帰ろうって言いたい。

でもカズがこんな思いをしてまで乗り越えようとしているんだから、俺は黙って寄り添おう。



裏庭で待っていた先輩は、カズが1人で来ると思っていたんだろう。

俺が一緒に現れたことに動揺しているように見えた。

先輩はカズを見て、繋がれた手を見て、最後に俺を見て、あからさまにその顔がひきつった。

睨んでしまっている自覚はある。

それでも俺は余計な口は出さないと決めてきたから何も言わない。

手は繋いだまま、カズの半歩後ろに立つ。

「·········」

3人の間にしばらくなんとも言えない沈黙が流れた。

「あの···ご用件はなんですか?」

いつまで経っても何も言わず固まっているだけの先輩に痺れをきらしたのかカズが口を開いた。

繋いでいる手にぐっと力が入って、カズの緊張が伝わってくる。

「いや···あの···」

先輩はハッと我に返って何かを言い掛けたが
チラチラと俺を見ては、口を開いて閉じてを繰り返して

「先輩?」
「···いや、ごめん···なんでもない···時間とって悪かった」

結局何も言わないまま肩をがっくりと落として去っていった。


カズはキョトンとして先輩を見送っていたが

「なんだったのかな?俺なんのために呼び出されたんだろ?」

不思議そうに首を傾げる。

それでも何もなくてホッとしたんだろう。
さっきまでの悲壮感は消えていた。

「カズが可愛すぎて、何話そうとしてたのか忘れちゃったんじゃないかな」
「そんな訳ないでしょ」

わざと冗談めかして言ったら、もうって怒ったフリをして笑う。

可愛い笑顔が見れたことで俺も安心できた。

/ 803ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp