第3章 手紙
「···やっぱり行く!」
「ええっ!?カズ!?」
闘争心を胸に宣言したら、翔ちゃんが焦ったような声を出した。
「どうして?無理しなくていいんだよ?その···まだ···」
翔ちゃんは言葉を濁してくれたけど、丸山くんのことを言ってるって分かる。
翔ちゃんがすごく心配してくれてるのも。
「···うん、まだ忘れられてないから···本当はこわい···」
「なら···」
でも俺は、いつまでも怯えて震えてるだけなんて嫌なんだ。
告白なのか嫌がらせなのか、どっちか分からないけど···この怖さに打ち勝てたら、ちょっと前に進める気がするんだよ。
翔ちゃんは困った顔をして、何度も行かなくていい無理しなくていいって言ってくれたけど。
「俺、逃げたくない!頑張るから!」
何を言っても俺が意思を曲げないと分かったのか、最後は諦めたように頷いてくれた。
「分かった」
「ごめんね、翔ちゃんが心配してくれてるのは分かってるんだけど」
翔ちゃんは、いいんだよって微笑んでくれた。
その優しい笑顔に勇気をもらっていたら
「俺も付いていくからね」
「ええっ!?」
当たり前って顔して言うから、今度は俺が焦ってしまう。
「1人で来るようになんて書いてなかったでしょ?」
翔ちゃんはしれっとしてるけど。
確かに書いてないけども。
でもそれは暗黙の了解というものなんじゃないの?
「絶対1人でなんて行かせないから」
そこまで翔ちゃんを付き合わせるわけにはいかないし、もし相手が翔ちゃんファンなら翔ちゃんが一緒に行くのは良くないんじゃないかって思うんだけど。
「俺は何もしないし、口も挟まない。側にいるだけだから」
翔ちゃんは絶対引かないって顔してる。
「一緒に行かせて?カズを守りたいんだ」
まっすぐな瞳と言葉に俺の胸はときめいてしまう。
翔ちゃんカッコいいんだもん、ズルいよ。
それにやっぱり怖いから
翔ちゃんが一緒に来てくれたら嬉しいもん
でもそれじゃ意味がないよね
もう甘えるのはやめなきゃだよ
正反対の思いの間で気持ちがぐらぐらと揺れる俺は、さんざん悩んで迷って···
「カズ···」
結局、翔ちゃんの甘い声に流されるように頷いてしまった。