第3章 手紙
「なんで嫌がらせだって思うの?そんな内容じゃないんでしょ?」
「そうなんだけど、でもなんだか分からなくて気持ち悪いし嫌な気持ちにもなるし···もしかしたら翔ちゃんのファンの人とかさ、翔ちゃんのこと好きな人からなんじゃないかと思って···」
言いながらニノが落ち込んでしまう。
「えぇっ!?翔くんから離れろとか書いてあるの?」
「書いてないけど」
そんなこと書いてあったら翔くんが黙ってないだろうと思ったけど、やっぱり書いてないらしい。
ニノは頭がいいからか、すぐゴチャゴチャ考え込んじゃうところがあるんだよなぁ。
「考えすぎだよ。翔くんの言う通り気にしない方がいいと思うよ」
「うん」
すっかり元気のなくなってしまったニノの頭をよしよししたけど、ニノは浮かない顔のままだった。
「···で、嫌がらせじゃないかってニノが言ってんだけど、どう思う?」
あんまりニノがションボリしていたから、潤に相談してみることにした。
もしかしたら翔くんから何か聞いてるかもしれないと思って。
「ニノ嫌がらせだって思ってんの?」
潤が呆れたような困ったような顔をする。
「その手紙ファンレターらしいよ。翔が言ってた」
やっぱり潤は知っていたらしい。
「ファンレターって何?ラブレターとは違うの?」
「告白とかはなくて、ひたすらニノの可愛さが書き連ねてあるんだってさ」
なんだそれ。
確かに誰が書いたのか分からないそんな手紙が毎日届いたら気持ち悪いだろう。
「そりゃニノも気持ち悪いって言いたくなるね」
ニノの心情が分かって、同情してしまう。
「やめさせられないのかな」
「誰からか分かんないらしいし、1人や2人じゃないしな。それに出してる方はまさかそんな風に思われてるなんて考えてないだろうよ」
そっか。
手紙を出してる人たちに悪気はないんだ。
ただニノを可愛いと思ってるだけで。
でもなぁ···
「しばらくは様子見るしかないんじゃないかな。まぁ翔がすげぇ警戒してるし、そのうち収まると思うよ」
「そっか···早く落ち着くといいんだけど」
視線の先ではニノが翔くんの隣で笑っていて。
でも心からの笑顔には見えなくて、早く解決することを願わずにいられなかった。