【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第6章 Just want to
リサのアパートに着いた頃、時刻は19時を回っていた。
一階の共同玄関にある大きな扉の前に立ち、部屋番号が記された呼び鈴を押す。
さびつきそうな古めかしいそれが、ジリ・・・と鳴った。
「アッシュ!」
大きな音を立てて勢いよく5階の窓が開き、小さな頭がこちらを見下ろした。
「スキップ、リサは、」
「アッシュ、リサを知らない!?」
お互いに同時に口にして、俺はリサがここに居ないことを悟った。
「リサ、図書館に行ってないんだね・・・。とりあえず上がってきてよ!」
スキップが部屋の中へ戻り、俺は階段を駆け上がった。
こんなことじゃ息切れなんかしないのに、足を前へ踏み出す度に心拍数が上がっていく。
リサはここに居ない。
嫌な胸騒ぎがする。
リサの部屋に入ると、スキップの姿を見るより先に、部屋の惨状に息を飲んだ。
「な、んだこれ・・・」
大量の札束と無数の薬瓶、そして色とりどりのワンピースや靴が、足の踏み場も無いほど廊下に散らばっていた。