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【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】

第2章 Requiem




「っはぁ、っはぁ、っ、は・・・・・・っ」

思うように動かない身体を引きずりながら、人気の無い廃ビルの屋上へと逃げ込んだ。

ドサリと四肢を投げ出して、月も星も見えない真っ暗な天を仰ぐ。

テリトリーの外だというのに油断していた。
さすがに数十人対一人で、しかも四方八方から撃たれたのでは逃げるのがやっとだった。

追い討ちをかけるように銃が故障した。

「あの武器屋、クズ同然の弾を掴ませやがったな・・・」

原因はきっと、銃弾の不良だ。
質の悪い弾をこめたせいで拳銃が使い物にならなくなってしまった。

いつも同じところから弾は買っていたのだが、そこはもう信用できないということだ。

多勢同士でやり合っていたら仲間は多数死んでいただろう。
真っ先に気づいたのが自分でよかったという考えが頭をよぎった。

逃げるのは本意では無かったが、銃が使えない遠距離戦では意味が無い。
肩や脚に敵の銃弾がかすめるのを感じながら、全速力で走った。

もう追って来る気配はないし、傷は手当さえすればたいしたことはない。
だが不運なことに、もはや自力ではアジトに帰れないほどに疲労している。

少し休めば動けるようになるが、急激な寒波が押し寄せているニューヨークの寒さでは、早く暖かい場所に移動しなければ凍え死んでしまいそうだった。

「やべえな・・・」

せめて、リンクスの誰かに連絡さえ出来れば・・・

かじかむ手でジーンズのポケットからスマホを取り出す。
無情にも、黒い画面には“Low battery”の赤文字が点滅していた。

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