【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第3章 美しい人
ーーー明け方、この街が一番静かになる時間に眠りにつき、夕方、街灯に明かりが灯る頃に目を覚ます。
いつからこんな生活を続けてきたのか、もう思い出すことも出来ない。
「今日は・・・火曜日」
眠い目を擦りながらスマホの画面を確認する。
図書館が遅くまで開いている日だ。
今から行けば三時間くらいは居られるはず。
着古したパーカーをかぶって、フードで頭を隠した。
まだ10月の中旬だというのに日が沈むとかなり冷える。
この冬はとても寒くなるのだと、地下鉄を待つ間に誰かが話しているのが聞こえた。
図書館に着くと、高く開放的な天井の下、いつものように思い思いに読書や勉強をする人々がいた。
静かで、落ち着ける、誰にも干渉されない場所。
ここにいると、まるで自分がとてもまともな人間になったような気がする。
私はこの空間が好きだった。