【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第10章 Shorter
「そしたら、目が覚めて・・・。わたし、明け方にアッシュがわたしをあっためてくれてたのをすぐに思い出せなくて、だ・・・・・・だれか男の人、だ、と思って」
自分の記憶と闘うようにリサの指がシーツをぎゅ、と掴んだ。
「い、一瞬で、これまでの・・・アッシュが助けてくれたことも全部、夢で、幻だったんじゃないかって。またあの日々に戻ったんじゃないかって、そう、思って・・・」
泣かないように、震えないように、感情の全てをぶちまけてしまわないように、リサは必死に堪えているように見えた。
こんな時、どうしてやればいい?
抱き締める?出来ない。
手を握る?駄目だ。
なんて声をかければいい?
わからない。
リサが感じている恐怖がわかるからこそ、余計にどうすればいいのかわからなかった。
「前にも・・・言ったけど、アッシュが怖かったんじゃないの・・・怖いと思ったことなんて無いのに・・・。ごめんなさい・・・」
何度も謝るリサの声が、まるで遥か彼方から聞こえてくるようだった。
こんなに近くにいるのに。
俺は何も出来ない。
俺にはどうしてやることもできない・・・