第9章 ふたつの心

アッシュが人を撃ち殺した。

漠然とした“死”そのものは恐ろしいと感じても、やっぱりアッシュのことを怖いとも遠ざけたいとも思わなかった。

だって私も、私の体を好きにする男の人達を何度も殺していたから。
頭の中で何度も何度も･･･
消えてくれることを願いながら。



自分の心や体が傷付いても、それでもひたすら我慢しなければいけないの？
自分の命を奪うかも知れない銃口がこちら向いていても、黙ってじっとしていなければいけないの？
わたしには何が正しいのか、分からない。

でもひとつだけ言えること。
もし私にアッシュのような力があったなら。

私はその力を、きっとためらい無く、大切な人を守るために使うよ。