【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第7章 山猫の住処
念の為、アッシュに今のことを報告したほうがいいかも知れない。
私はスマホをズボンのポケットから取り出して、まだ一度もメッセージを送ったことの無いアッシュの連絡先を表示させた。
その時だった。
コン、コン、とすぐ後ろの扉がノックで振動した。
アッシュじゃない。
だってアッシュはノックなんてしない。
スキップでもない。
スキップは絶対に足音を立てながら走って来るから。
じゃあ・・・誰・・・・・・
背筋がゾクリと震えた。
出てはいけない。
本能がそう告げていた。
震える指でアッシュにメッセージを送ろうとした瞬間。
「リサ!!!伏せろ!!!!!」
廊下にアッシュの叫び声が響き渡った。
その声に弾かれるようにして、床に伏せた。
ほとんど同時に、耳をつんざくような銃声が何発も鳴り響いて、ものすごい風圧に包まれる。
バラバラと、何かの破片が体の上に降り注いだ。
何が起きているのかわからず後ろを振り向く。
扉の上半分が木っ端微塵に吹き飛んでいた。
「リサ!」
既に意味を為していない扉を蹴破るようにして部屋に飛び込んできたのは、アッシュだった。
拳銃を片手に、息を切らしている。
「アッシュ・・・」
恐る恐る立ち上がった私を見て、アッシュは安堵の表情を浮かべた。
そして、私がアッシュの背後に見たものは・・・・・・・・・頭部を撃ち抜かれて床に崩れ落ちている、無数の死体だった。