第3章 2人の物語
他の店より、活気溢れる酒屋には、1つの海賊団が酒を飲んでいた。
(あっ…)
「あ!!」
その中には、さっきのバーで気絶した男の処理を頼んだpenguinという帽子をかぶっている海賊がいてびっくりする。
向こうも、ルルアに気づいたのか大きな声をあげる。
「さ、さっきの」
「えぇ…どうも」
ぎこちなく挨拶をすると、色気のある女の人が口を開ける。
「え、2人知り合い?」
「ダイアナさん〜!いや、知り合いっていってもいいのか…」
penguinとかかれた帽子をかぶっている男が言う。
どうやら彼女はダイアナというらしい。
2人は知り合いなのだろう。
「知り合いもなにも名前すらしらねぇっていうか…」
「あら、そうなの?」
男の言葉にダイアナが言う。
これは、名前をいうべき流れだ、な……。
「あぁ、わたしはルルアよ」
「ペンギンっす」
あの帽子には自分の名前がかいてあったのか…。
そう思っていると、ダイアナがルルアの腕を引っ張った。
(あっ……)
そういえば、知り合いに嘘をつけ。と言われたんだった。
妊娠した、と。
その知り合いは、ペンギンという男のことだろう。
ルルアはそう思い、ペンギンに言う。
「あ、あのっダイアナちゃん妊娠してるんです」
「マジ?」
思い切っていったのに、かえってきた言葉は予想以上に軽く、思わずえっ…となってしまう。
すると、ダイアナがルルアの耳に口を持っていき小さな声で言う。
「いや、ペンギンにじゃなくてもっとカッコいい…えっと、えっとね、ローっていう男の人にーー」
「なんでお前がいんだ…」
ダイアナがルルアの耳元で話しているというのに、その声に続きを掻き消される。
ダイアナもその声をきき、ルルアの耳から口を話し、その声の主へと顔を向けた。
「ロー…」
あぁ…
その彼女の横顔でわかった。
この人なんだと、彼女はこの人が好きなんだ、と。
ダイアナが見つめるローと呼ばれた男へと視線を向けると、目つきの悪い男の人がいた。
その人を見ると、心がぎゅっと締め付けられたような感じになり、ルルアは戸惑う。
前にも、会ったことのあるような。
あの夢の幸せなひと時の一瞬一瞬を過ごしていたあの人に、似ている気がしたからだった。