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【BLEACH】Breath In Me【原作沿い女主】

第3章 Not To Remain Children




 彼女は思う。


 これで本当に良いのだろうか。私は選択を誤ってはいないだろうか。


 けれど、そんな詮無い思いは即座に頭から消し去る。


 躊躇いは決断力を鈍らせるだけだ。それに、今さら何を思ったとしても、もう何もかもが遅すぎる。


 選択を誤ってはいないか? 我ながら馬鹿な事を言う。
 選択なんて、とっくの昔に間違ってしまったじゃないか。間違ったからこんな、こんなところまで流れ着いてしまったんじゃないか。


「……だからだよ」
「……ほんとに良いのか」
「何度も聞くな」


 男の暗に窺うような質問に答えた女の声は、頑とした鋼のごとき意志をはらんでいた。


 彼女の影になった顔の上で、血のようにどす赤い隻眼が妖しい輝きを放つ。


「私の意志は変わらない。決めたんだから、もう迷うこともない。そう言ったし、あんたはそれを認めてくれたじゃないか」
「……そうだったな」


 男は顔を上向け、保健室の天井に声を放った。その声には、諦めのような、哀れみのような、ともかくも酷く悲しげな何かが混在し、それを聞いた女は銀色の睫毛をただただ伏せることしかできなかった。


 彼女はその「何か」が何なのかよく分かっていた。


 彼が今まで、どれだけ自分に尽くしてくれたか、それを考えると胸を痛めずにはいられない。彼がいなければ自分は今まで生きていくことすらできなかったのだ。それは海よりも深く理解している。


 でも、それでも。
 私はこの刀を、いつまでも鞘に納めたままではいられない。


 かつて多くの血を吸ったこの刀が、数多の犠牲の上に立つこの肉体が、魂が、平和な日常に溺れて錆びついていく。それが私は耐えられない。

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