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【BLEACH】Breath In Me【原作沿い女主】

第3章 Not To Remain Children




「まったく、こんなところに空になった肉体を置いていくなんて、不用心だなぁ」


 開け放たれた保健室の窓から、グラウンドの乾いた土の匂いをはらんだ風が吹き込んでくる。それに応じて、ばたばたと帆のようにふくらむ白いカーテンは、西日を浴びて目にいたいほど眩しく輝いていた。


 そして、その窓の桟に、片膝を立てて腰掛けている者がいる。


 太陽に背を向けるようにして座っているので、顔は影になっていてよく分からない。しかし日射しに照らし出されている身体の線の細さや、緩く一つにまとめた銀色の髪の毛から、女だと言うことだけはすぐに分かる。


 彼女は、窓際のベッドに呼吸もせずに横たわっている少年の、地毛とは思えないほど派手な色をした髪の毛を愛おしそうに指で梳きながら、再び口を開いた。


「ま、そういうお馬鹿さんなところが、あいつの長所でもあるんだけどな」


「それお前、絶対ほめてねえぞ」


 彼女の言葉に口を挟んだのは、包帯や消毒液などが保管された棚に寄りかかっている男だった。彼がほんの少し身じろぎする度に鳴る、チリ、という音は、耳に付いている十字架の形をしたピアスが揺れる音だ。


「失敬な。ほめてるよ、ちゃんと」
「どっちでも良い。ま、不用心なのは確かだけどな。死神始めて間もないっつっても、ちょいと危なっかしすぎやしねえか?」
「うん」


 男の言葉に、女の方が頷いた。その間にも彼女の指は、ぴくりともせずにベッドに倒れている少年の髪の毛に、額に、頬に、触れていく。その手つきは優しく、眠っている赤ん坊に母親がしてやるそれとよく似ていた。

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