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【BLEACH】Breath In Me【原作沿い女主】

第2章 A girl




 疑問を振り払い、小走りで教室の出入り口に向かう。けれどルキアが付いてきていないことに気づき、ドアに手をかけて立ち止まった。ルキアはまだ俺の机の前に立っている。


 軽く握り込んだ手の人差し指を唇に押し当て、目を伏せている――何かを深く考え込んでいるような重々しい表情だ。


「おい、どうしたよルキア。虚のところに行くんだろ」
「ああ……だが……一護」


 手を唇から離し、ルキアは視線は合わさず顔だけこちらに向けた。背中に眩しいほどの夕日を浴び、学校で黒く淀んでいる奴の顔はひどく憔悴しているように見える。


 出逢ってから十数日か、それ以上か。ルキアは時折、こうして深海に沈むような暗い面もちで考え込むことがあった。自分の住んでいる尸魂界とやらに帰れないんで、ホームシックにでもなっているんだろうか。いつもは早くしろだののろまだのとさんざん文句を言ってけしかけるくせに。


 囁くように名前を呼ばれて、頭をがしがしとひっかき回しながら返事をする。


「何だよ」
「……いや。やはり、何でもない……行こうか」
「おう」


 ルキアは自らに言い聞かせるように首を振り、ふっと淡く笑むと、小走りでドアの方に駆けてきた。俺はその姿をちらりと視界の隅で見やってから、教室を出た。


 ったく、死神ってのは意外と悠長なもんだな。人の魂を喰らう化け物が出たってのに、のんびりとセンチメンタルな気分に浸る余裕があるとは。


 ん? 死神ってセンチメンタルな気分になる事ってあるのか?


 外見を華麗に裏切ってかなり長いこと生きてるらしいし、色々と悟ってるだろうから、感傷に浸ることも多い、のか……?


 ま、いいか。そんなことより退治だ。虚退治。







 崩れ去るのはいつも唐突だ。げんにルキアがやってきてから、ずっと続いていくはずだった俺の平凡な日常は、かくももろく崩れていったわけで。


 だから、思いもしなかったんだ。


 あいつの秘密を、あいつがずっと隠していたものを、こんなふうに知ることになるなんて。

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