第1章 帰・宅
「アクセス、フラァーッシュ!!! ってか!」
夜の裏通りに景気のいい台詞が響きわたる。遅れて、大きな笑い声。
スーツに身を包む彼は、狭い歩幅で悠々と帰路に就いていた。
「からかい甲斐がありすぎんだよなぁ……あいつ。あいつ、なぁ」
街灯に照らされ、明るい色のツインテールが光を揺らし、コンビニの膨れた袋は白々しく主張する。
「ま、大丈夫だろ」
カン、カン、カン。
階段を軽やかに鳴らす小さな靴。
「おー冷える冷える」
早足に自室のドアへ向かい、ポケットをまさぐる。感覚の鈍った指先が鍵を見つけ、鍵穴に差して回すまで8秒。もどかしさに舌打ちをしつつ、ドアを開け、帰り着く。
「はいはい、ただいまーっと」
パタン、と閉じた。