第2章 Who are you
「んっ…」
頭が、痛い。
いつから眠りについていたのだろうか。
頭が痛いから、随分と長い間寝ていたのかもしれない。
「ここ、は…」
重いまぶたを開けると、馴染みのない光景に声が漏れた。
その途端に、病院で嗅ぐような消毒液の匂いがツンと鼻にきた。
(病院かしら…?)
そうなると、自分は病気かなんかで入院していたのだろうか。
そんな考えは、床に散らばっている大量の本や、たくさんの地図によって消えた。
自分はどうしてココにいるのだろうと、記憶を辿るものの、最後の記憶が思い出せない。
ギィ…
音がする方に視線をやると、目つきの悪い背の高い男がやってきてゾッとしたひなは思わず唇を噛んだ。
「ひな」
「え…」
目つきの悪い知らない男の人に名前を呼ばれ思わず声を漏らし、その男の方を見上げると、彼の目は、優しい気がして、なぜが胸がぎゅっとなった。
(わたしの名前…)
どうして知っているの。と口を開きかけると、ふわっと暖かい感触がした。
その感触と同時に消毒液の匂いが鼻腔をくすぐり、なぜかずっとそよ温もりを求めていたような。そんな気持ちになった。
「よかった…」
(へ?…)
その温もりと同時に、耳元で声がし、思わず固まってしまう。
「あ、あの」
「…無事でよかった」
優しい声でその男が言うと、胸がざわざわする。
そのざわざわがわからなくて、ひなは彼の胸に両手を当てた。
「はなしっ離してッ!」
焦った。
びっくりした。
(わたし、この人に抱きしめられたの…?)
驚いて男の方を見ると、彼は驚いたような表情をしていて。
近くで見ると随分と顔が整っているのがわかる。