第5章 幸せになれないマンドゥルゴ
船へ戻ると、2人はすぐに医務室へと入った。
真っ暗な闇の中、歪んだ月が2人を照らす。
「泣くなよ」
「だ、だって…っうぅ」
(ローを殺しちゃうんだよ…?)
「やだよ…」
「ひな…」
ねぇ、ローに名前を呼ばれるたびに嬉しいって思うの。
幸せって思うの。
「生まれ変わったら、またお前を愛してやるよ」
(ロー…)
なによ、それ。
「それって幸せだ…ねっ」
ぐちゃぐちゃな笑顔でごめんね。
嬉しいよ。
「おやすみ」
「……うっつっ…っ」
「ひな、愛してる」
ローの顔は、ローの瞳はまっすぐで。
優しい瞳をしていて。
あぁ、愛してるのわたしも。
幸せな気持ちになった。
このおやすみが最後の言葉だと思うと、やっぱり涙がとまらない。
そんなひなにローはため息をつき、ひなの耳元へ口を寄せる。
「ひな」
「んぇ…?っ」
「ーーーーーーーだから、安心しろ」
「…うん」
「「おやすみ」」