第4章 危険のサイン
街は朝方なのにもかかわらず、随分と賑わっており、栄えた街だということがわかる。
まだ陽は顔を出していなくて、辺りは薄暗く、ネオンの光が辺りを照らしている。
他の店よりもいっけん明るい店を見つけ、ひなはそのバーに入った。
バーはやはり賑わっており、ダーツを投げる人や、酒をグビグビ飲む人で溢れていた。
「お姉さん、なににしますか」
「フレーヴァードワインを」
このワインを頼む客は珍しいのか、店主は一瞬固まったが、すぐに了解。と言った。
「あっあっんっ…あっ♡」
いやらしいクチュクチュという音とともに聞こえてきた喘ぎ声が耳に入った。
(嘘でしょう…?)
いくら薄暗いといっても常識のない行動にひなは思わず固まってしまう。
だいいち、ひなはそういう経験がまずなく、こんな生々しい音なんて聞いたらここにいれなくなるではないか。
「せんっちょうさっ…あっだめぇぁっ♡」
ゴトンっ…
「どうぞ」
ひなの前に頼んだワインが置かれ、ひなは思わずグビッと飲んでしまう。
「はぁ…、最近の海賊はあんなんばっかで困るよほんと」
店主が呆れながら言う。
(海賊…)
たしかにさっき、船長さんだなんて声が聞こえてきた気がする。
「やっ…だめえっぁ」
「そうかなら、やめるが」
「うぅっあっ…ぅだめつづけて…?」
「いい子だ…」
(…え?)
聞こえてきた声に思わず固まってしまう。
ひなの後ろでいやらしい行為を行っている海賊…。
その海賊の声…。
船長…。
「ロー…?」
気づくとひなは行為を行っている男女の方へと視線を移していた。
女の人は肌が見え見えの露出の高い服を着ていて、胸が半分はみ出しており、彼女の太ももあたりに赤いレースのパンツがずらされていた。
男の人は、目つきは悪いもののやはり整った顔立ちをしていて。
ローだった。
(なに、して…。)
驚いた顔でこちらをみるひなにローは思わず固まってしまった。
「…ひな?」
呟くように名前を呼ばれ、ひなは自分の目が赤くなっていくのを感じた。
自分の舌がウズウズとしている。
(だめだよ、わたし…)
裏切られてない。
信じてないから。
わたしは、大丈夫だから。
ねぇ…。
ひなはガタッとカウンターの席を立ち、店を飛び出した。