第3章 動き出す恋心
「あの、しろくまさん…ローを見なかったかしら」
ローになにか言いたくて早く起きたのに、ローの姿を探しても探しで見つからず、思い切ってひなはしろくまに尋ねた。
「ベーポっ!しろくまじゃなくてベポだよオレ」
「あーごめんなさい?」
「ひなってばさ、ひどいよね記憶がなくなってるっていってもさ」
ズゥンって暗い空気がしろくまのベポから溢れてきてひなは困惑顔を浮かべた。
「ベポそれで、ローはどこにいるかわかる?」
困ったようにいうひなにベポは一瞬躊躇ったような表情をした。
人の顔を伺ってきたひなにはこの表情の意味をよく知っていた。
(わたしに、言えない場所にいるのね…)
だから、教えられないの?
こんなことだけわかってしまう自分が嫌になる。
「いや、ひな。キャプテンは…」
「もう、いいわよ。もう島に着いたわよねわたしーー」
「ダメ!」
続きを言ってくれないのに、どこにいるかいってくれないのにひなの言葉だけを遮ったベポに腹が立ったひなはベポを軽くにらんだ。
「ダメだよ…。船に降りちゃダメだよ」
「少し、街に行って見たいって思っただけよ…」
(別に、戻ってこないわけじゃないわ…)
泣きそうな声でいうベポにひなは思わず言ってしまった。
その言葉を聞き、ベポはほんとう?と明るい表情になった。
「えぇ…」
ひなはベポと3時までに戻ると約束をし、船を降りた。