第3章 動き出す恋心
コンコン…
律儀なノック音に耳を傾ける。
「おい」
「は、はい…」
急にドア越しから声がしたもので、その声の主の威圧そうな声色に思わず返事をしてしまった。
ギィ…
「いるなら返事をしろ」
中に入ってきたのはローだった。
さっきよりも不機嫌そうな声にやはり怖いと感じてしまう。
(それにこの人さっき好きって…)
わたしのこと好きって…。
「あ?なに見てやがる」
ローのことを考えていたものだから自然と彼の方に視線がいってしまったひなは、ローの方を見つめる形になってしまい、慌てて目をそらした。
「べ、別に…」
わたしのこと好きとか絶対うそ。
嘘に決まってる。
記憶が戻る前のわたしともそういう関係じゃなかったっていってたし…。
「いったぁい!」
ボスっとひなの顔に服が直撃した。
「ちょっと」
「お前の服だ。感謝するんだな」
ローの方を見ると、ローはそういいひなの顔にあたり、ベッドの上へと転がった服を見下ろした。
(そうよ。だいいち好きな子に対する態度じゃないわ)
「ちょっともう出てってよ」
「ここは俺の船だ。お前に命令される必要なんざねぇよ」
(………)
「それは、そうだけど…。」
ひなは不足そうに口を尖らした。
「あ、島にはいつ着くの?」
「…明朝あたりだな」
「わかった。明日の朝わたしは船を降ります。ありがとうございました」
「あ?」
不機嫌そうな顔をしたローにひなは困惑顔を浮かべる。
「なんでだ」
「だ、だって」
(わたしのことを好きとか嘘みたいだし…)
なら、どうして海賊船にこんなわたしみたいな弱い女がいるの…。
もしかして…
それを考えるとショックだけどそれしか思いつかなかない。
「わ、わたしあなたの相手なんて、できないわよ…」
(ヤッたことないし…)
海賊船に弱い女がいる理由。
それは、海にいる間の性欲処理係だ。