第4章 大都会暗号マップ事件
「お邪魔します、蘭さん」
探偵事務所のドアを開けて声をかけると、蘭とコナンはキョトンと毛利さんを見ていて思わず首を傾げた。そんな2人を知り目に毛利さんは視線がテレビに釘付けである。
「ん? どうかしたんですか?」
「あ、天月」
恵理香に気づいた蘭の顔が明るくなる。
テレビに視線を移すと、ニュース番組が流れていた。
「そうだ……
オレは昨日までこの男を尾行していたんだ………
この男をな」
その言葉にコナンと蘭は大きく目を見開き驚く。
「遅いねー、お父さん」
所轄の前で毛利さんを待つ3人。
コナンは待っている間に、サッカーボールをリズミよく足で弾ませている。蘭は所轄の建物を見て心配そうにしているし、そして蘭に連れ出された恵理香は半目で蘭の背中を見ていた。
思う事といえば……、何故こうなった。である。
一昨日喫茶店に来た蘭が私に連絡先の要求をした。
そんな蘭に恵理香は安定の断りを入れようとしたが、蘭の一言に頷くことしかできなかった。
さすが押しの強さ。いや、彼女の場合、腕っ節の強さの方があっているのだが……? てか、マジでつええ!
「わたしと勝負してください」
「勝負ですか?」
「はい。わたしが勝ったら連絡先を教えてください、それと敬語もやめてください。わたしだけタメ口なんて嫌なんで」
恵理香は気まずげに眼を逸らすが、何か思いついたのか蘭に向き直る。
「ふむ。いいですよ」
「え、ほんとですか!」
「はい、それで勝負とは一体何をするんですか?」
顎に人差し指を当て聞く恵理香に、自信に満ちた蘭が告げる。
「腕相撲です」
「……腕相撲? 別にいいですけど……」
テーブルに肘をついた蘭に習って肘をつく。
「本当に私は中腰でもいいんですか? これだと力が入っちゃいますよ」
「大丈夫です、本気出しますから」
思わず唾を飲み込む。
「……っ」
手を組むと変な緊張感が襲ってきて前歯を軽く噛む。
ケータイのアラームが鳴った瞬間だった、ドガっという音がして眼をそろそろと握る手に向けると、自分の手の甲がテーブルについていて蘭の手の甲は天井を向いていた。
「……へえ?」
そのあまりの一瞬の事に呆然と組まれた手を見ていると、目の前で爽やかな声が耳に届く。
「これからよろしく天月、わたしの事は蘭って呼んでね」