第8章 レイー強がり通しのキス我慢ー
そこから何度か課題が出された。時間数が増えたキスの課題だ。30分、45分と徐々に長くなり、その度にアリスと唇を重ねる。レイはギリギリのところで耐えていた。頑なに口を結んだままのアリス。やわらかい唇に触れれば触れるほどその奥へ舌を押し込みたくなる。
"60分のキス"
「っ、チッ、またかよっ」
耐えなければならないという現実がレイをイライラさせる。アリスはまた身体を縮こまらせレイからは伺うことのできない表情は申し訳なさそうに、悲しそうに歪んでいた。
「…耐えろ、おれ、」
小さく呟かれた言葉はレイの独り言だった。けれどそれはアリスの耳にも届いていて肩をすくめる。それに気づかずレイはアリスの肩を掴むと60分のキスをスタートさせた。
「…は、」
これだけキスを続けていれば舌を絡めなくても苦しくなる。アリスはレイがくれる息継ぎのタイミングでは足りなくなってきていた。でもそれを伝えることができずただ耐えているだけ。
あと少しー
あと少しだからーー
あと数分でおわるーー
それでも我慢できずアリスは酸素を吸い込むために息継ぎの合間に顔を大きく上げた。口を開いて思いっきり酸素をとりいれる。
「っ、はぁ…っ、」
「っ、…!?」
レイは思わず息を飲んだ。息継ぎ中に不意に大きく動いたアリスの顔。フッと持ち上がった動きで前髪が上へと浮き上がる。はじめて見ることの出来たアリスの顔は想像なんかよりよっぽど美しくレイの心臓がドクンっと音を立てる。
「っ、おまっ、…」
「…?」
アリスは酸欠なのかぼーっとレイを見つめる。しかし数秒後ハッとしたようにすぐに下を向いてしまった。
「っおい、こっち見ろって!」
もう一度見たいーー
レイの語気が荒くなる。アリスはイヤイヤと小さく首を振った。
「っ、いいから!顔あげろっ」
レイがアリスの顎を持ち上げクイッと上を向かせる。隠されていた顔は全てレイの目で捉えることができた。
ーーおれだけのアリス
それでもアリスは目を伏せる。レイの目を一切見ることなく睫毛が震えていた。
「っ、もう、しらねぇ、から…」
レイは顎を掴んだままアリスの唇へキスを落とす。閉じられた唇を強引に開きそこへ自らの舌を割り入れた。
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