第8章 レイー強がり通しのキス我慢ー
ルールの紙が光って課題の文字が浮き上がった。
"15分間のキス"
ほとんど会話もしていない顔すらまともに見れていない相手とするにはなかなか難易度の高い課題だと思う。これ以上アリスを怯えさせたくないーーちがう、アリスに拒絶されたくない。でもルールは待ってくれないのだ。レイは乱暴に頭をかいた。
「悪いけど、紙光ったから…」
そこから言葉が紡げず、ゆっくりと距離を詰めていく。
ーーお願いだから、逃げるなよ
自らの心の声が聞こえてレイは自分が緊張していることに気付く。なんだこれ、と感じたことない感覚に焦るもそれを表に出さずゆっくりとアリスと向き合う。
「…、する、けど、」
何て言っていいのかわからない。するとアリスはほんの少しだけ顔を上げる。小さな形の良い唇が薄く開いて初めて言葉を発した。
「…レイ…」
「っ、」
声を聞けた喜びと、初めて発した言葉が自分の名前だったこと、キスをしなきゃいけないという状況。レイは混乱しながら顔を歪め時間がくる焦りを理由にアリスの唇へ自らの唇を押し当てた。
ーーやわらかい
息継ぎのために唇を離す度にアリスの顔を確認しようとするレイ。しかし少し俯きがちな顔と前髪のせいでしっかり捉えることが出来ずもどかしくてチッと舌打ちをする。
「っ、」
その度にアリスが身体を縮こませるがレイはそれに気づいていなかった。そして気がづいたら15分が終わっていた。
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