第8章 レイー強がり通しのキス我慢ー
「…っ、!?」
急に押し入ってきたレイの舌にアリスの身体がビクンッと反応する。
「んん゛ーっん゛っ、…っ!」
何が起きてるのか把握できない。けれど暴れ回る舌を追い出そうと無意識に唇に力を入れ閉じようとする。
「っ、…閉じんな…」
低い声に囁かれ従いそうになるがそれでもアリスはキュッと唇を噤む。
「…させねぇ…」
レイはアリスの頬を親指と中指で包むように持つと指先に力を入れ強引に口を開かせた。そしてその隙間から再び舌を割り込ませる。
「っや、…っ」
口を開け続けるように固定されてしまったせいで舌を追い出す事が出来ずアリスはただただ耐えるだけ。
ーーもうすぐおわる
ギュッと目を瞑り時間がくるのをひたすらに待ちわび
「っはぁ、っ…はぁ…」
ーーおわ、った、
ルールの紙がそのおわりを知らせてくれた。やっとおわった、と胸を撫で下ろしたのもつかの間レイのキスは何故か止まらない。
ーーなんで
「っ、も、おわっ、た、のに、」
息継ぎの合間にアリスがレイへ伝える。けれどレイはキスをやめようとはしない。
「っ、じかん、過ぎて、っ」
まるで聞こえてないかのようにキスを続けるレイ。アリスは理由がわからず泣きそうになる。
「っやぁ、もっ、むり、…」
息が続かない。レイとキスしている間早く済ませようと呼吸も最小限に抑えていた。それなのにここへきてこんなのーー解放されずずっと貪られる。
「っ、はぁ、っぁ」
我慢していたのに、声が漏れてしまう。
こんなのー
嫌われてしまうっーー
アリスの頭をフッと過ぎった考えはどんどん彼女自身を追い込んで、それと同時に激しいキスに耐えることができなくてなって
「っやぁっ…ぁぁ」
気づいたら涙が溢れて止まらなくなっていた。
「っ、!?…おいっ」
それを見てレイは我に帰る。
「っごめん、!…っ」
ハッとして慌てて手を離したレイ。その頬は触れようとした時ーー
「…き、らい…」
アリスが小さく呟いた。
ーー酸素が足り、ない、
そしてそのままアリスは意識を手放してしまった
「きらいにならないで。」
その声は最後までレイには届かず二人しかいない静かな部屋へすーっと吸い込まれて消えた。
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