• テキストサイズ

最愛 【黒子のバスケ】

第8章 それぞれの場所


side緑間

「あのね…好きな人ができたの」

いつもよりも小さくたどたどしい話し方ではあったが確実にそう言った。
あの事があってからこれまで、誰のことも好きになれず、近寄ってくる異性を徹底的に避けていたみさきが「好きな人ができた」と話してくれた

玲子と俺が喜びを伝えるとゆっくりと顔を上げて笑い返してくれた。

今まで見たみさきの笑顔の中で一番綺麗だと思った。

俺たちの結婚式で知り合ってその後何度か会ってNYでも一緒にいたと聞いて驚いた。

今まで恋愛を避け続けていたみさきの警戒心をどうやって解いたのか聞いてみたいものだと思った。
それでも「付き合うとかは考えられない」というみさきの言葉通り、自分が好きでいることは認めても、恋愛関係になるということは避けているのだと分かった。

だが、これまでのみさきからすれば大きな進歩だった。

みさきは恋愛を“脳内物質の異常分泌が原因でただの気のせい“だと言って異性と必要以上に関わってこなかったし一瞬でも好意を見せようものなら徹底的に避けていた。
その時から比べたら人を好きになれたということだけでも俺にとっては本当に嬉しいことだった。

俺たちの結婚式でみさきの警戒心を解けるような相手がいたのか考えていると、玲子も同じだったのかみさきに質問を投げかけると、少しためらった後に驚きの名前を口にした。

「青峰君なの…」

青峰という名前など何度も聞いていたのに、この時ばかりは初めて聞く名前の様な不思議な感覚に陥った。

そして青峰に呼び出された時のカフェでのやり取りが鮮明に蘇った。

何の迷いもなく、周りの目など気にせずみさきを「好きだ」といった青峰の強い意思のある声が頭の中で何度も再生される。

驚きのあまり「本当に好きなのか?」なんて確認してしまったが、みさきの答えを聞いてみさきが青峰を本当に好きなのだと分かった。
そしてそれを認めさせたのが火神だったということも。

火神は口には出さないもののみさきのことを強く想っていることは“鈍感”と言われている俺にも分かっていた。

NBAでチャンスをつかんだにも関わらず、みさきの為にそれを放り出して一緒に帰国してしまうんだから分からない方がおかしい。
恐らく玲子だってそれに気づいているはずだ。

それでもみさきの幸せの為に背中を押してやるとは、見直したのだよ。

/ 1719ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp