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最愛 【黒子のバスケ】

第8章 それぞれの場所


「はぁ」

思わず大きなため息が出た。

シャッター音が止まって黄瀬君がこっちに来ると、さっきまでの悪態が嘘のように止まってニコニコしてる。

次のアウターを確認してから黄瀬君の汗を押さえて、おでこだけパウダーで修正をした。

「さすがに暑い?少し冷やします?」

「いや大丈夫」

そして、すぐに立ち上がってあたしの後ろの二人に向き直った。






「あんたらさ、仕事する気ないなら帰れよ」

「「えっ…?」」

いつもと違う黄瀬君の声と顔つきにその場の空気がヒヤリとして、黄瀬君のマネージャーさんでさえも驚いた様子で何も言葉を発しない。

「メイクは俺が指名してんの。他の誰よりもうまいから。外注ってバカにしてるけどさ、無数にいるメイクの中でフリーランスでやってくって事がどれだけ大変か分かってねぇだろ?」

怒気を含んだ声に私もたじろいだけど、黙ってる訳にいかない

「黄瀬君。いいから」

「みさきッちは黙ってて」

「それに、この子は俺なんかが逆立ちしたって敵わないようないい男にすげぇ大事にされてんだから俺ごとき眼中にないっつーの」

はい!?!?!?!?
何サラッと嘘ついてるの!?そんな嘘通じる訳ないでしょ!?
そもそも黄瀬君が“ごとき”になっちゃう男の人なんてそうそういない。
そして居たとしてもあたしごときじゃ話にならない。

「時間もないんで、撮影再開でお願いします!」

少し大きめの、黄瀬くんのマネージャーの声でみんなが我に返った様に持ち場に戻った。


「黄瀬くん、嫌な事させてすみません」

「いや、あれを聞き続ける方が嫌だったッス」

さっきの怒気が嘘の様に、すっかりいつもの黄瀬くん

「聞こえてたの?」

「聞こえたってより見えた。敵意剥き出しでみさきっちのこと見ながら“外注”って何度も口が動いてた。なんで言い返さなかったんスか?」

「あたしは誰に何を言われてもどう思われてもやる事は変わらない。さすがにバッグのことを言われた時は頭にきたけど、それで頭にくるってことは図星ってことだから。あたしがバッグを持つのにふさわしくなればいいだけ」

「ははは!さすがっす」


「それより、なんであんな嘘ついたの?」

「え?なにがっスか?」

「だか…「あ、俺スタイリストんとこ行かなきゃ!」

もー…
これで彼氏いない歴=年齢ってバレたらどうするの!?
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