第2章 独占したかった男と、天才。
__pururu__と無機質な着信音が響く。
その音にソファで眠っていた男は目を覚ました。
「……はい?…………京子!?京子!!」
しかし、その男の目に映ったのは血を流していた自分の妻だった。
僕と彼女、秋風一織と会ってから数日経った頃。
僕はある場所へと赴いていた。
「という事は当時、部屋の鍵がかかっており、この部屋には貴方と京子さんしかいなかった……。」
「あ、あぁ…でも!俺はやってない!俺はここで寝ていたんだ!」
必死に疑いを解こうと男、藤村 平助(フジムラ ヘイスケ)は声を張り上げた。
「しかしですね……」
僕と同僚の奴が男に当時の状況を聞いているが、現場証拠から言えばコイツが犯人で間違いないだろう。
寝ていた所、かかってきた電話を出たら死んだ妻を見つけた。
その理由は嘘をつこうと思えば思いつく、が。この男には動悸がない。
喧嘩をしてとか、浮気されてたとかがあったのならありえる。
しかし、そんな事は一切無かった。
「迷宮入りかぁ?」
……あ、こういう時に天才脳はどうするんだ?
「と、言うわけでお願いします。」
「…断る。」
古本屋に来て、僕は頭を下げて今回の事件解決の手伝いを秋風一織に頼んだ。
「断る理由は幾つかあるが、君の名前を知らない。私は名乗ったのにもね。
次に、私は協力者になった覚えはない。故に、私がこの事件解決に関わる理由は無い。」
「それでですね」
「は?」
「藤村夫妻は仲睦まじく、理想の夫婦と言われていたそうです。
彼らは幼馴染で、お互いの初恋相手だったそうです。」
「はぁ…強引なものだねぇ。
その幼馴染にもう一人いなかったかい?」