第11章 闇 終
ーーD級任務から帰った7歳のカカシは、息を引き取った自分の父親、はたけサクモを、家のリビングで発見する。
その日、カカシの、
母親の月命日だった。
夜7時前、遠方での芋掘りの任務で、ドロドロになったカカシは、「ただいま」と言って玄関の戸口を開ける。
入った瞬間、カカシは異変に気づき、
顔をしかめる。
いつもと様子が ちがう。
まず、
部屋の明かりが ついてない。
玄関や、その先にあるリビングも真っ暗だ。
だれも住んでいないかのように見えた。
朝は日差しがさし、暖かく、
サクモがコーヒーを入れていた。
ある任務が終わってから、思いつめた様子だったサクモ。今日は任務前に戻ったかのように、朝早く起きて
カカシのために、朝ごはんを作っていた。
トントンとナスを切り、グツグツと煮たあと、
味噌を加えた。同時に秋刀魚のパリパリ焼ける音が
リビングに響いた。ふっくら炊きたての温かいご飯。
以前のように 明るくなったサクモを見て、カカシは心が躍るように嬉しかった。優しくあたたかい笑みを浮かべ、同じ食卓を囲んだ。
優しい声。あたたかい笑顔。
朝と、ちがう雰囲気が家に漂った。
ひんやりとした空気が、リビングから流れた。
電気もガスも、数時間ついた形跡がない。
「……父さん?」
カカシは声をかける。
戻らない返事。無音の部屋。
ガラガラと、戸口を閉めた。
自分が起こす音しか耳に入らない。
カカシの靴を脱ぐ動作が、
突如、固まる。
最初、カカシは、
自分の父親は、サクモは、
寝てると、思った。
ならば、どうして、
父さんの吐息が聞こえない。
どうして、いびきが聞こえない。
カカシの小さな不安は、
しだいに、どんどん大きく膨らんだ。
まさか……!
ちがう。ちがうでしょ。
そんなわけない。
そうだ。ちがう。
つい、先週の話だ。
主治医の先生に、
診察してもらったばかりじゃないか。