第9章 闇 報告
「待て待て、カカシ、話を聞け!」
肩に必死につかまり、パックンが叫ぶ。しかしカカシは止まらない。
「花奏!」
アパートの鍵が壊され、半開きだ。ドアノブに手をかけて、扉を開けて、リビングに目をやった。
コップが床に割れていた。部屋のなかで戦闘したように、リビングに置かれた机は、斜めに傾き、椅子は床に倒れていた。
「……花奏……?」
気配はないのに、名を呼んだ。心拍が上がり、呼吸が早くなる。
花奏は、チャクラも、体力も消耗して、ほとんど動けないはずだ。ほぼ抵抗なく、捕まったんじゃないのか……?
「…………くそ!」
ガンと、拳で壁を叩いたカカシの左目は、
紅く光った。
「花奏……」
カカシは、ゆっくりと足を動かし、土足で、ベッドへと歩いた。
花奏がいた、布団を触った。
まだ、あたたかい。そう、遠くへは行ってない。
頭を掻きむしり、奥歯を噛み締めた。
「舐めやがって……」
離れなければ よかった。そうすれば、花奏は、連れ去らわれなかった。ヤナギは、オレではなく、花奏が狙いだったのか?
ならば、なにが狙いだ。
とにかく、いまは
花奏を助けるのが最優先だ。
カカシは、急いで追いかけようと、
踵を返して、玄関に向かう。
その姿を見上げて、パックンは、
玄関で立ちはだかる。
「カカシ、落ちつけ。ヤナギと、花奏からの伝言じゃ」
落ちつく声で言った。カカシは、目を大きく見開いて、パックンを見下ろした。
「ヤナギと、……花奏? 」
混乱した声で言った。
「どういうことだ。まずなにがあった? パックン、教えてくれ」
「……わかった…」
パックンは、静かに言った。