第9章 闇 報告
三代目、猿飛は、
頭を下げ続けるカカシを、キセルをふかして、静かに眺めた。
初めてだった。
「……カカシが?」
報告を受けた三代目、猿飛は、自分の耳を疑った。
カカシは、冷淡で、感情をほとんど表に出さない。
ロボットのように、忠実に任務を遂行してきた男が、たったひとりの女、くの一のためだけに、仕事を放棄した。
花奏のため。
それだけのために。
里の危機よりも、カカシは、花奏を優先した。
カカシは、暗部ろ班隊長であることも、忍であることも、すべて投げ捨てたのだ。
三代目、猿飛ヒルゼンは、テンゾウから、話を聞いたとき、驚きと怒りが込み上げた。
暗部ろ班隊長が、緊急時にいない。
反逆者が、暗部ろ班内にいる。
さらに、その反逆者は、ビンゴブックに載る男と、繋がりがあるかもしれない。
外部への機密情報漏洩の
可能性も出てきた。
それなのに、暗部トップの
隊長のカカシがいない。
率先して指揮を
とらなければならない。
それなのに、いつまでたっても、
戻ってこない。
前代未聞だった。無責任だ。はなはだしい。三代目、猿飛ヒルゼンは怒りに震えた。説教では済まさん。怒りで頭が沸騰しそうだった。
「カカシ……、もう、良い。顔を上げろ……」
それと同時に、やはり血が通う人の子だと、改めて感じた。
カカシ自身、私情のために、身勝手な行動をとったことは、後にも先にも、今日が初めてだった。
三代目、猿飛は、
カカシがずっと心配だった。
神無毘橋の戦いで、仲間のオビトを失った。オビトを失った数ヶ月後、人柱力に侵された仲間のリンを、千鳥で胸をつら抜いた。
それ以後、カカシは、仲間を失うことを恐れた。自分の命よりも、仲間を優先するカカシが、死に急ぐように思えた。