第29章 始まり
季節は春から夏に向かう頃。
あれから2年がたった。
風がふく。
「ただいま」
夕焼けが沈む。ちょうど外で洗濯物を取り込んでいた。背後からの足音に振り返った。
「カカシ、おかえりなさい」
ここは見晴らしの良い土地。もともと私の家があった。焼けてしまったけれども、もう一度、大きな家を建てた。さすがに赤い屋根ではないけれど、ふたりで選んだ。広くて開放感あるお家で。
「あーー、つかれた」
旦那さまのカカシが、暗部の任務が終えて帰ってきた。八忍犬もいて騒がしい。
「わん、わん、パ、パパァ、ア」
私の足元に、ひっついてばかりだった、小さな女の子がヨチヨチ歩きでカカシのほうへ行く。草の上をヨタヨタ歩いていく。
「パ、パパ、パパ」
「うん、ただいま。元気してたー?わー、また重たくなったねー」
娘は急に抱っこされて、高い高いされた瞬間、ビックリした顔をしたけれども、すぐに満面の笑みを作った。
「パァ、パ、パパ!」
キャハハ…と、さっきまで、おやつを食べたいと、グズっていたのが嘘のように笑顔が広がった。
「うんうん、パパだよー」
もう1歳を超えた娘にカカシはデレデレで。何か手に袋があって、中から取り出した。
「ほら、おみやげ」
「あ、あ、ぁあ!」
「うん、クマさん」
小さなクマのぬいぐるみを、手にすると、娘は目をキラキラさせて潰れるぐらい抱きしめた。ふわふわの茶色い可愛らしい、ぬいぐるみ。
昔のカカシでは考えられない
お土産を選んできた。
「よかったねー」
私は洗濯物をかごに全ていれて、リビングに運んだ。八忍犬は各々の犬小屋に入って、ふぅと息をはいて疲れたようだ。
「あ、あとで水と、ご飯もっていくねー」
「うむ、ビーフジャーキーも頼む」とパックンがいう。
うん。言い方がオヤジみたいだ。
「カカシ、お風呂はいるよね。ちょうど、わいてるよ」
「ああ、サンキュ」
私がカカシのそばに寄ると、娘をゆっくり下ろして、娘の小さな頭を撫でた。
「また大きくなったな」
「うん、そうでしょう?ムッチりした感じが可愛い」
「花奏、なぁ、こっちむいて」