第9章 闇 報告
カカシは全速力で走り、アカデミーへ向かった。
説教どころでは済まない。 自分の処遇だけで済むなら、いくらでも罰を受けようと、心に決めていた。
息を少し切らして、火影室をノックする。 落ちつけ、落ちつけ。 入る前から、緊迫する空気が漂う。大きく息を吸った。
「三代目、失礼します。 カカシです。 遅くなりました。 大変申し訳ございません」
一呼吸おき、震える手を落ちつかせ、火影室の重圧的な扉を開いた。
「この、馬鹿ものが!!」
入った途端に飛んできたのは、部屋中に響く怒鳴り声。ビリビリと窓が揺れる。カカシは肩をすくめた。
「カカシ……」
正面に座る、白髪頭でキセルを蒸かした三代目は、青筋を立てて、眉間にシワを作った。握りしめた こぶしは、わなわなと震える。
「……お前の身勝手な行動は、懲罰ものじゃぞ! 分かっておるのか!」
三代目は、ガンッと、キセルを机に叩きつけて、ギロリとカカシを睨んだ。
「すべて、覚悟の上です。大変申し訳ございませんでした。 どんな罰をも受け入れます」
カカシは、謝罪を口にして、深々と頭を下げた。必要ならば、床に頭をこすりつけてもいい。
問題は、謝っても、
「許されない事態」になっていないか。
それが、なによりも、気がかりだった。
三代目は、おのれを落ち着かせるように、マッチで、火を灯す。火をキセルにつけて、ふぅっと天井を見上げ、煙りを吐き出した。
「事態は深刻じゃ。 ……言わんでも、わかっておるな。 始末書は覚悟しておけ。 説教は後回しじゃ」
視線をカカシに戻す三代目、猿飛ヒルゼンの表情は、硬く険しい。
「御意」と、短く返事をしたが、カカシは床を見続ける。 三代目の許しは得ていない。
その姿を見て、猿飛ヒルゼンは、大きく肺から空気を吐き出した。
「カカシ……、もうよい、顔を上げろ」
三代目から、そう言われても、カカシは頭を上げなかった。
身勝手な行動だった。
それは、だれよりも、
カカシが、いちばん理解していた。