第1章 家
「三代目、今思いついたのですが、暗部の仮眠室で泊まるのはどうですか?あそこはベッドもありますし」
暗部本部には、深夜に帰ってきた忍の為に寝れる部屋がある。二段ベッド二つが両方の壁にひっつくように置かれ、そこで寝落ちする部下が多い。
男女はしっかりと分けられ、さらには鍵が付いているのだから、安心して寝れるのだ。
いや、男が襲ってくるとかそんな心配では無く、プライベートはしっかりと分けられ、寝込みを襲われて殺される心配は無いという意味。だいたい暗部のくノ一を襲う男などいない。みんな肉食獣より強くて美しく、強かなのだから。
「あそこは、私用で、寝泊まりする場では無い。一時的と言えど駄目じゃ」
きっぱりと三代目は私に言い、カカシに続ける。
「カカシ、意味は分かったな?」
「ーーーはい」
カカシは、深い声で短く答えた。
ーー何が?しまった、ちゃんと聞いてなかった。いや、聞いてたけど、カカシの答えた意味が分からない。
「三代目、今、何が決定したのですか?」
頭に大量のはてなマークを飛ばしながら聞くが、三代目は顰めて面倒臭そうな顔をされる。
「花奏、今言えばまた話がややこしくなる。兎に角、カカシについていけ。ワシはこれから会合があるから忙しいんじゃ」
出て行くように促され、渋々と、火影室を出て、ドアを閉めた。カカシは先程から、何回も何回も、諦めたように溜息を付いている。余程嫌な決定事項が今、決定したようだ。
あ、カカシに相談してみようかな。これは生きるか死ぬかの重大な事案なのだから致し方無い。
カカシは隊長だから、よもや、お金を貸してくれるのかもしれない。宿に泊まって暗部の仕事をして、お金が貯まっていけば、アパートを借りればいいのだから。
しかし、礼金敷金考えたら……、半年はかかる。宿に半年も過ごすのはあまり得策では無い気もする。考えてみれば、宿代もバカにならない。
うーーーん……と唸りながら、自分の顔を徐々に渋面に変えながら、カカシと二人で出口に向かうアカデミーの廊下を歩いていた。