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【NARUTO】柔らかな月を見上げて

第23章 戦闘と平和の狭間


翌日、朝日が昇る前に暗部服に着替えた。装具はカカシのアパートだ。

静かに眠る吐息。布団の上からサスケ君の身体を撫でた。サスケ君の寝顔は綺麗で、眠った姿も可愛い。

ーー行ってくるね。

影分身を出した。

私は靴を履き、鍵をかけずに扉を開いた。外は暗い。びゅっと冷たい風がふく。

閉めるとき、一瞬躊躇した自分。
離れがたい自分。

ゆっくり、最後はパタンとしめた。中から影分身がガチャリと鍵を閉める音が鳴る。


影分身は消さなかった。


朝「おはよう」とサスケ君に言ってあげたかったのだ。それから消そうと思った。


扉の前に、白い猫がいる。顔を手で撫でていた。私を見上げて、にゃあと鳴くと、すりすりと身体を寄せた。

「任務行ってくるね…もう木ノ葉に帰れないかもしれないんだ。だからサスケ君頼んだよ」

よしよしとふわふわの白い毛並を撫でた。
白い猫は目をまん丸にしていた。

「よし、行ってきます」

立ち上がり南西を見た。真っ暗な木ノ葉隠れ里。サスケ君の家からアカデミーはよく見えた。大きな時計は5時をさした。


カカシのアパートに
装具を取りに向かった。

合鍵を取り出し、鍵穴に入れて回した。ガチャリと開く。だれもいない静まりかえった部屋が広がる。



パチンと電気をつけた。カカシの部屋はなにも変わらない。きちんと整理されて赤子のおもちゃは端に置かれる。

歩いてタンスを開けた。腕の装具をつける。兎面も頭にかぶった。クナイ、手裏剣、巻物、爆札。必要な用具を装備して、行こうと振り返ったときだ。


白い紙が机に置いてある。
綺麗なペンも添えて。

近寄った。なんだろうか。カカシの伝言かもしれない。

白い紙にカカシの名前が書いてある。住所と本籍と自分の両親の名前が書いてあった。

「…っーー!!カカシ……!!」



【帰ったらいっしょに出そうな】



そう綺麗なカカシの文字が
添えてあった。婚姻届とともに。



「うん……うん……わかってるよ……」


嗚咽さえ漏れた。

何度も頷き、頬を拭った。
ペンを持ち、鼻をすすりながら自分の名前を誓いの用紙に書いた。

もしも出せなくても
記念に残れば……と思ったのだ。



「カカシ……ありがとう」



最後の文字は、涙で前が見えず
小さく震えた。


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