第20章 ひとり。
「大丈夫ですよ。大した怪我ではなく良かったですね」
顔の絆創膏を外した医師が
笑顔で言った。
「暗部のお方にしては、珍しい箇所を怪我されましたね」
ガーゼに塗り薬を貼り
私の頬やおでこに貼ると、
たまらずに看護師が
クスクス口を手で押さえた。
「お大事にしてくださいね」
「は、はい。気をつけます」
私は苦笑いだ。
恥ずかしくて頭をかいた。
そりゃ暗部が顔面から盛大に転けた傷を見れば、誰でも笑うだろうな。いつも面をつけているのだから。
「頭や腰など調べましたが、心配ありませんよ。明日から任務についても大丈夫です。塗り薬を出しておきますね。じゃあ……念のため、来週ぐらいもう一度来てください」
「はい、ありがとうございます。では、失礼します」
私は頭を下げて席を立った。扉に手を触れたときだった。看護師と医師が小さな話を始めたのは。
「あの子、調子はどうだ?」
「全然、反応がありません。呆然と外を眺めたままです。身体はなんともないはずなのに……。今朝の朝食は全部を床にぶち撒けたんです」
げんなりした看護師の声に、医師は深いため息をついた。
「……そうか。当分様子を見るしかないな……」
診察室の扉を
私は静かに閉めた。