第19章 記憶
「花奏、ねむい…?」
こっくりこっくり、身体が揺れる。
お風呂から上がった。歯磨きしてパジャマに着替えて、ドライヤーでカカシに、髪の毛を乾かしてもらってる。気持ちいい。寝そう。
「うん…だいじょう、ぶ」
後ろからの熱風が心地よい眠りを誘う。もう寝れる。いつでも寝れる。
「小さなときもそうだったよ。お風呂入るとすぐ寝ちゃうのよ、花奏。ミルク作ってる間に寝ちゃうから大変だった」
「ふふ、カカシ、お父さんみたい」
「自分でも思う。オレいけるなーって思って育児してたからね」
「ふふ、ありがとうね、カカシ」
「ハイ、おしまい。寝よっか」
「うん」
カカシはドライヤーをオフにして、洗面台へ持っていった。
私はベッドのなかに入った。毛布が入っている。ぬくぬくで気持ちいい。
「カカシ、私といっしょに寝てたの?」
「んー、まーね。でもね、お前死ぬほど寝ぞう悪いのよ。ゴロンゴロン転がるから、たまにオレが下で寝てたよ」
カカシは苦笑いを
浮かべて同じ布団に入った。
彼がなかに入ると、もっと気持ちよくてあたたかい。男性だからかな。カカシの匂いや空気感は凄く安心した。
「おやすみ…カカシ」
「おやすみ…花奏」
私はカカシの手を両手で握って目をつむった。カカシは子供か、って笑ってるけどね。
あたたかくて大きな手が心地よい。
私はふわふわ優しい気持ちで眠りについた。
その日、夢を見た。
小さな私はカカシの大きな腕に抱かれて買い物に来ていた。アヒルのおもちゃを見つけて、キラキラした瞳で言葉にならない声を上げて、指をさした。
えーー、とイヤそうなカカシの声。
ダメだと言われて、半泣きになる小さな私。
はぁ…と溜め息。それから
「わかった」と言う諦めた声。
カカシはそのおもちゃを棚から取って、
私に渡して頭を優しく撫でた。
私は夢の中でキャハキャハと
笑っていた。