第16章 小さな手
木ノ葉警務部隊が10名前後でこちらに歩いてくるのだ。いや、暗部の中では「うちは部隊」と呼ばれる。
厄介な集団だ。全員写輪眼を使える。チャクラは2人ともほぼゼロ。戦う力は残っていない。拘束されたら一巻の終わりだ。
「カカシ、お前は、うちはの街に足を踏み入れるな、と忠告したはずだ。 忘れたか?」
殺気を隠さずに、腕組みする中心の男は続ける。
「お前はうちはの街へ不法侵入をした。 ご同行願いたいのだが?」
威圧的に話す男。背負うモノは「うちは」の家紋。ここ数ヶ月。乱暴な取り締まりを強化させる警務部隊。木ノ葉の忍の反感を買っていた。
赤子を早朝に預けた理由は、カカシが警務部隊に会いたくなかったからだ。早朝から任務だという理由もあったが、警務部隊の人達は、なにかと難癖を付けたがる。
そうは言っても、さすがに赤子には手を出さないとカカシは踏んで、イタチに託した。
背中に「うちはマーク」を掲げる警務部隊の人間は、眉間に深いシワを作り、カカシを睨んだ。
オビトの目を持つ。写輪眼を使い、注目される木ノ葉の忍が、何よりも気に食わなかった。
「カカシ!聞いているのか!?」
「んー? 残念。入ってませんよ?」
カカシはワザとおどけた。
敷居はまたいでいない。うちはの門前だ。くるりと背中を見せたカカシ。背中から罵声が飛んだ。
「貴様、木ノ葉の忍だと言うことを忘れるな!」
「うちはと木ノ葉は、対等な立場でしょ?」
上も下もない。
「ああ!? ……ふざけた口の利き方をすれば、即刻牢屋へ連れて行くが、良いんだな??」
「…………はぁ……」
ぎゃあぎゃあと、まー……ウルサイねえ……。うちはの一族はどうも苦手だね。プライドが高すぎる。
カカシは、嫌がらせや誹謗中傷を、オビトの目を託されてから、常に受けてきた。
慣れている。
ただ毎度ながら気分は沈んだ。
「ぅえ……ぅえ……」と小さな泣き声をあげる花奏。突然の大きな音にびっくりしたようだ。
「あーー、泣かないの。ね? 帰ろっか? 大きい声で恐いよねー」
少しだけ、高い高いすると、「キャハキャハ……」と笑みがこぼれる。
カカシが赤子を抱きしめて、背中にぽんぽんと小さな音をたてて、優しく撫でた。
大丈夫。お前は絶対に守るよ。