第16章 小さな手
「さ、三代目…………」
カカシは助けを求めるように
呟いて青ざめた。
みるみる幼くなる花奏が立っていられなくなり、床に音を立てて座ってしまう。
頭の重さに耐えれず、ころんと、後ろに転ぶのを、カカシはとっさに防いだ。小さな頭を手のひらで支えて、自身の身にまとうコートに埋もれていく花奏。
小さくなるに連れて、徐々に服が合わなくなり、床に次々と落ちる。
白地にエメラルドの薔薇のししゅうが入ったブラジャーが肩にかかっている。下着も足の指で引っかかっているだけ。床に落ちるのも時間の問題だ。
「っ!……」
カカシは露骨に顔をしかめた。決して誰にも見せたくない。例え三代目であろうとも。
「パックン! 花奏の鞄を持って来てくれ」
目をパックンに向けて、もう一度視線を戻せば、さらに小さくなる花奏。これ以上は危険だ!
「花奏!!」
声を荒げたカカシに、ビクっと反応する花奏は両手を上げた。大きな音に敏感に反応し、小さく柔らかな手のひらはぎゅっと拳を作った。
「……………………止まったか?」
止まった……ようだ。
小さくなるのは、どうにか止まった。一同は安堵の息をつく。
「原始反射……」
カカシは記憶を辿り呟く。
腕を曲げて頭の位置で、小さな指を丸めたまま花奏の姿。
産まれて数カ月の間、赤子はモロー反射や吸啜反射、そして把握反射が起こる。月齢を重ねるにつれて、その反応はなくなってゆく。
花奏は、小さな声で「ふ、にゃあ、ふぁあ、……」と泣き出し、口を開けた。
当たり前だが、歯がない。膨らんだお腹。緩々な任服、コート。靴は床に落ちている。
赤子。
花奏が赤子に……。
しかも生後数ヶ月もたたない姿。