第14章 失ったもの
任服に着替えて頭に兎面をつけたら、後ろからカカシに、ヒョイと取られた。
「いらないでしょ。 今日は休みじゃない。置いていきなよ」
カカシは、ベッドの横にある机の上に、兎面を置いた。
「そうだね。じゃあ行こうか」
玄関の方へ歩いた。あ、靴が濡れてまだ乾いていない。サンダルしかない。
「ねえ、サンダル貸して……」
振り返ったとき。カカシの手の平が玄関のドアに置かれた。ドンッと音が鳴った。カカシの表情は真面目で、私を見下ろしている。笑顔はない。大きな影が私の顔にかかった。
「ごめん……、余裕なくて中で出した。花奏、今日ピル飲んでないでしょ。ごめんな」
沈んだ瞳が私を見つめた。ティッシュで情事後に拭った。でも下着はやはり少し濡れてしまう。
「花奏、ごめんな、イヤだったよな? 次からちゃんとゴム付けるから」
カカシの顔が近すぎて
私の心臓がうるさい。
「う、うん、大丈夫だよ?あとで暗部に行って飲むしね。 赤ちゃん出来たら大変だしね」
私は苦笑いで早口だ。どうしてだろう。自分で言って、自分で泣きそうだ。
「カカシは…さ、やっぱり出来ちゃったら、困るでしょう? 」
20歳で親なんて想像が出来ない。カカシは、ましてや暗部ろ班隊長だ。子供と笑って、たわむれるところなんて、私は見たことない。
だいたい……出来ちゃった婚なんて、いつも冷静沈着なカカシじゃ、あり得ない。
私は目をサンダルに向けて、
鼻で笑った。サンダルに足をいれた。