第14章 失ったもの
「…………花奏」
遠くで声が聞こえる。
「起きなよ、ほら、時間だよ」
肩をトントンと叩かれて、私は薄く目を開けた。
カカシは任服に着替え、額当てを斜めにして、口布をつけていた。
「もう昼前だし、そろそろ出かけよ、な?」
「ん……、んー……」
目をこすり、伸びをして身体を起こした。あくびが出る。眠い……。ぼうっとしちゃう。
「花奏、……なあ、見えちゃってるよ? 誘うのが上手いね」
カカシが手ぶくろを装着しながら、面白そうな顔をして、私を見下ろす。
「っ!!」
凍りついた私は、急いで布団で身体を隠した。
「み、み、見ちゃダメ!!」
そうだ、裸だ、私。途端に耳が熱くなる。あーいやだ、恥ずかしい。カカシは自分だけ着替えてる。ずるいよ、なんなの。オンオフ切り替えが早すぎ。
「胸の形さ、キレイだよね、花奏って」
突然振られた言葉に、目が泳いだ。火が出る。
「そ、そんなこと言わなくていいの、や、やめてよ、もう……恥ずかしい……」
見られてる。落ち着かない。恥ずかしい。……あれ、下着がない。服もない。探してるのに見つからない。
「 もう乾いてるよ」
カカシが私の目の前に持ってきた。昨日の任服の着替えだ。洗濯機が止まったようだ。乾燥機能を使っていたからホカホカだ。あったかい。
「あ、ありがとう……カカシ、向こうに行ってて? ぜったい見ちゃダメだからね?」
任服を受け取ってカカシに言った。私の言葉に、急に面白くなさそうな顔をした。
「はいはい。わかりましたよ」
ぽんっと頭を撫でて、カカシが洗面台へ向かった。なんで見たいの。意味不明。
私は急いで任服に着替えた。