第2章 アパート。
「カカシ、上がったよ?」
脱衣所から、湯気が出るように真っ赤な花奏は、オレの方を向いて笑った。
「ごめんね?私、どうもアレだけは苦手で……」
頭をタオルで拭きながら、先ほどスーパーで買ったパーカーとズボンに着替えて、落ち着かない様子だ。
「お前、13歳から1人で暮らしてたくせに、どうやって対処してたんだよ」
ちょっとだけ、意地悪く、つっけんどんに聞いた。オレはお前のせいで大変な目に遭ったんだ。まだ頭が邪な考えは抜け切れてないんだからな。
「スプレーでガンガンに……あははは、ごめんね。先に使わせてもらって。どうぞ?」
笑って誤魔化す花奏。ふーん、お前苦手なモノがあったんだな。平気でいつも暗部の任務を淡々と、こなしてたから、恐いものなんか無いと思っていたが。良いネタが増えた。
「じゃあ、入るわ、オレも」
席を立って歩いて行こうとしたが、どうも気にくわない。何故オレだけこんな気持ちになってんだ。
あんなに裸体をしっかりと見られたのに、その事は一切無かった事にするんだな。うーん、苛つく。オレに見られても痛くも痒くも無いってか?意識したのは最初だけか?
「………」
花奏の方へ向かった。すれ違う際、耳元に囁いてやった。
「意外とエロい身体しているんだ。誘ってるならそう言いなよ」
「…っ!?誘ってないよ!あれは、そんなつもりじゃ無くて本気でビックリしただけなの!」
その割に胸押し付けてきたじゃん。あれやられたら誘ってる意外ないでしょ。絶対他の野郎なら襲われる案件だ。
「あんなに力いっぱい可愛く抱きしめてきたから、抱いて欲しいのかと思った」
「ち、違う!あれは恐かっただけなの!」
ムキになりすぎ。可愛いヤツだな。
「ハイハイ。オレ風呂入るから、ベッド使って良いから寝とけよ」
ぽんぽんと頭を撫でて風呂に向かった。これだけ言えば、ちゃんとオレを意識して、あんな事はしてこないでしょ。まったく。
「うん。ありがとう……」
その声を背中で聞いて脱衣所に入った。
花奏は人を信用し過ぎる。あんな事されたら、襲われても文句言えないでしょ。
耐えれるのか、オレは。
シャワーを浴びながら、悶々と一人悩んでいた。