第2章 アパート。
「キャァァァア!!」
突然風呂場から悲鳴が聞こえ、飛んでいって引き戸を開けて叫んだ。
「おい、どうした!?…っ、!?」
「出たーーーキャァーー!!」
ガバッといきなり抱きついてきた瞬間、思考が一瞬停止して、オレは瞬時に頬を赤らめる。
「分かったから、落ちつけ!」
「無理ーー無理無理ーー!!絶対ダメーームリーー!」
花奏が震えながら抱きつく。どうしていいか迷うオレは、その場で固まってしまった。花奏を押し退けたり、触ったり出来ない。手が触れないよう、腕をを上げた。
マズイ、ダメだ、これは…………。
身体を洗っている最中だったんだろう。まっ裸で濡れたまま抱きつかれてしまった。髪から水滴が滴り落ちてオレの任服が濡れてゆく。
「花奏…わかったから、な?離れてくれない?」
「イヤ!アレ先に取って捨てて!」
更にオレにしがみ付く花奏。
何?何ごと?
顔をオレの身体に、すっぽりと埋めて、背中に手を回して悲鳴に似た声を出す。
「出たの!出た出た!」
「いや、何が……!!」
ふにっと柔らかく当たる肌とシャンプーの香りに、ぞくりと背中に電流が走る。我慢出来ずに反応してしまうオレは、冷静を装って声を出した。
「っ……落ちつけ、ほら深呼吸しようか?な?」
ふるふると頭を振り半泣きの花奏。
オレは自分の頭に、必至に、落ちつけ落ちつけと、言い聞かせていた。
こんなに取り乱した花奏には驚きだが、いくらオレでも、これには頭を抱えた。