第11章 闇 終
「カカシ! こっちだ!」
匂いを嗅ぎ走るパックンに
2人はついていく。
この方角は、終末の谷……!?
カカシは、怪訝に思い、暗い森のなかを走った。
「え? だれもいない……?」
終末の谷へ到着したとき、花奏があたりを見回しながら言った。大量の水の音が響くだけ。
人の気配はなかった。
「いや、……匂いが残ってる……。こっちだ!」
カカシは水の中へ、
ためらわずに、飛び込む。
どぼん……!
水中はどこまでも暗い。 月明かりを頼りに必死に探した。どこだ、どこだ、どこだ! 確かに、ここにいるのは分かる……。でも真っ暗でなんにも見えない。
どこだ。どこだ!
30センチメートル先すら、真っ暗だ。触れたものを手当たり次第触るが、木の枝や葉っぱ。小さなクナイもあった。
ちくしょう……、
絶対……ここにいるのに……!!!
一度水面から出て、カカシは叫ぶ。
「ヤナギーーー!!!」
あたりを見渡すが、反応はない。
はぁはぁ……はぁ、はぁ……
息が上がる。
どうする。どうする。
考えろ、考えろ……!
7歳、ふたりでこの水中を捜索するのは不可能だ。カカシは同じように水中に入ろうとした花奏に手をあげて止めた。
「花奏、待って、だれか呼んで……」
そう言ってカカシは、
水面に気づく。
こぽん。
こぽっと、水中から小さな空気が上がった。細かな泡が奥からのぼる。
「この下……!……ヤナギ!!」
どぶん。
もう一度カカシは、
深く深く潜った。
泡がぷくぷく奥からのぼる。
この先にいる。
だれかがいる……!!
重力に逆らい、手や足を使い懸命に奥へ進む。
カカシは息が苦しくなる。
あとすこし……
ヤナギ……
なあ、オレはもう、
これ以上なにも失いたくない。
大事な仲間を
友だちを
失いたくないんだよ!!
カカシは、深く手で水をかきわけて潜る。
どれだけ潜って探してもヤナギへは、
たどりつかない。
なんで見つからない……。
「っ、」
カカシの息は苦しくなる。
くそ……。
もう一度、息つぎをしようと、
思ったそのときだ。
暗い闇の水中で、
肌色の小さな手が、微かに見えた。