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【YOI男主】裏・小話集【R18】

第1章 裏・小話集


『声よりもキス(礼之×ユーリ)』


大阪のアイスショーに出演したユーリとオタベックは、純の招待で京都の町家に宿泊した。
その際礼之と守道も同行し、ホテルとは違う古き良き日本の家屋を堪能したユーリ達は、「内装は今風に対応しとるから、上の階にベッドもあるで」と言う純に2階の寝室を譲り、畳の大部屋に布団を敷いて寝る事にしたのである。

夜中、ユーリは何かの物音に目を覚ました。
「…?」
自分の背後側には、オタベックと守道が眠っている筈だが、やがて音の正体に気付くと眠気も吹き飛ぶほどの衝撃を覚えた。
控えめではあるが、隠し切れていない2人分の息遣いと声は徐々に激しく湿り気を帯び、その内の1つはすすり泣きへと変化していく。
背後で何が起こっているのか判らぬ程、ユーリも子供ではない。
だが、
(何が悲しくて、ダチとセンセーの濡れ場の声聞かなきゃなんねぇんだよ!)
きつく目を閉じて再び眠ろうとするも、更に荒くなった2人の声と吐息に、ユーリの聴覚は益々敏感になってしまう。
かといって布団を出る訳にもいかず、このまま耐え忍ぶしかないのかと、いつしか泣きたい気持ちになっていたユーリの前に、不意に何かが包み込むように覆い被さってきた。
「礼之」
「シッ。知らんぷりして寝よう」
小さな囁きと共に、ユーリの頭は礼之の胸元へ押し付けられた。
平常時より早い恋人の鼓動に、それでも幾らか落ち着きを取り戻したユーリは、甘えた声を出す。
「…眠れそうにねぇよ」
「じゃあ、おまじないしてあげる」
ユーリの唇を礼之の親指がなぞった後、優しく塞いできた。
口腔に滑り込んできた舌に、ユーリの感覚は背後の声より年下の恋人に支配されていく。
(ああ、俺はこいつとキスするのが本当に好きなんだな)
何度も身体を重ねているのに、キスだけはまるで初めての時のような気持ちになる。
一旦唇を離した礼之に、ユーリがねだるような視線を向けると、再び唇が合わせられた。

翌朝。
ユーリは、キッチンで朝食の支度をする守道とオタベックに近付くと、「ゆうべはお楽しみでしたね」と日本語とロシア語でボソリと呟く。
目に見えて慌てだす2人を面白そうに眺めると、「今日の俺らのランチ、お前らの奢りだからな」と言葉を続けた。
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