第6章 戦争
「お前、どうしてボクに黙ってそんなことをしていたのだ!」
堕胎薬のことを話すと、ヤーシュ様は烈火のごとくお怒りになった。
ヤーシュ様は威圧的で怖い人ではあるけれど、感情を乱して怒鳴るということは普通ほとんどない。
その彼が、今は本当に怒っている。
「そんなことをして、ボクらの子を産むチャンスを何度も潰していたのか!?いやそれより、その薬は、お前の体に問題は起こさないのか!?お前が体を悪くしたらどうする!変な薬は飲むな!今後絶対にだ!必要な時は医者を呼べ!わかったな!」
ここまで怒鳴り散らすヤーシュ様を見たのは、後にも先にも、この時だけだったように思う。
私が飲んでいた薬は怪しいものではありません、ちゃんとした所から入手していますと説明すると、ようやく少し落ち着いてくれた。
それでも
「お前が隠れてそのような薬を服用しなければならなかった、それはボクの落ち度だ。済まなかった。ボクはずっと前から、お前を娶り、子を成したいと望んでいる。それに中に出すとボクが言った時、お前は何も言わなかった。だから、わかってくれたものだと思っていたのだ。早合点だった。本当に済まなかった」
と謝り続けた。
領主様に謝られるなんて、恐れ多いにもほどがある。