第6章 戦争
「そのう、ヤーシュ様は、いつから私を…妻にしてもいいと、思ってらっしゃたのですか?」
「お前が館に来た日だ」
「えっ、一目惚れですか?」
「何だそれは」
「一目で恋に落ちることです」
「言っている意味がわからないが、お前はボクが今まで見てきた中で、1番ボクの好みに合う見た目をしていた」
「見た目!」
「なんだ」
「つまり顔で判断したと…」
「何が悪い」
「悪いとは申しませんが、やはり人間は中身が大事といいますか…。顔がよくても性格の不一致ということもありますし…」
「お前は初めて会った人間の中身を即、理解できるのか?そんなことは不可能だ。理解できるのは外見の美醜だけだ」
「それはわかりますが、だからこそ恋心は時間をかけて育むものといいますか」
「外見を好きになれない人間の中身までいちいち探っていたら、膨大な時間がかかるではないか。ボクはそこまで嫁探しにかかずらってはおれんのだ。だからまず見た目で選ぶ。それをクリアした人間の中身だけ見るのだ。お前は見た目がよかったから嫁候補にした。本当に娶ってもよいと思えたのは、まあもう少し後だな」
「は、はあ…そうですか」
呆れた。なんだこいつ。
前からわかっていたけど、ヤーシュ様は徹底した効率主義者だ。
領地の政事も、配偶者探しも、同じ様に考えているんだろう。
でもとにかく私は外見をクリアした上、中身まで合格したということだ。
まあそれは、悪い気はしない。むしろ嬉しい。