第6章 戦争
7日後。
朝から館はバタバタとせわしなかった。ヤーシュ様がおかえりになるのだ。
私も、昨日念入りに掃除した部屋をもう一度掃除しなおした。
窓を拭いていると、波か風のようなザワザワした音が街中から聞こえてきた。
ああ、ヤーシュ様が凱旋されたのだ!
ワアワアと怒涛の騒ぎが近づいてくる。やがてそれは館の前まで来た。私は緊張と感動に心を震わせながら、執務室の中に立っていた。
──強く覚悟して待っていなされ
先日、男性から言われた言葉が胸をよぎった。
覚悟しろと言われたはいいけど、何を覚悟すればいいのかよくわからなかった…。
いやいや、私が不安がっていてどうする。
ヤーシュ様は大変なお仕事を終えて戻られたのだ。
何があっても私が受け入れ、包み込み、癒やしてさしあげねば。
そんなことを考えていたら
ドバタン
と、扉が壊れるんじゃないかってくらいの音を立てて人が入ってきた。
「あ…」
ヤーシュ様だ!
「ヤーシュ様、おかえりなさいませ!戦勝まことにおめでたく、また御身無事のご帰還、何よりでございます!」
一ヶ月半ぶりのヤーシュ様は、土埃にまみれた戦袍(鎧の上に着る服をこう言うそうだ)を身にまとい、険しい顔をして、鎖かたびらをガチャガチャ言わせながら、無言で私に近づいてきた。
「あの、ヤーシュ様…」
どうしたの?
なぜ何も言ってくださらないの?
どこを見ているの?