第6章 戦争
「ハァ…」
ため息をついた。
ヤーシュ様がいなくなって1ヶ月と13日。
誰も居ない部屋を掃除して、自分しか食べないお菓子を焼くのは切ない。
けれど彼が帰ってきたとき、ピカピカの部屋で迎えられるように、以前よりも美味しいお菓子を差し上げられるように、それだけを考えて過ごした。
花瓶の花を替えるために廊下を歩いていると、1人の男性が私を呼び止めた。
「あなた、ええ、あなたです。そうそう。あなた、閣下付きの使用人でいらっしゃいますでしょう」
この人は…そう、確かヤーシュ様の部下のお一人だ。何度かヤーシュ様が執務室へ連れ込まれて、難しいことを話し合っていたっけ。
館へ来て結構な歳月が経っているけれど、私はいまだにヤーシュ様のお仕事関係の人はチンプンカンプン。
それにしてもこの人は、お偉い人であるはずだけど、なぜ使用人の私にも丁寧な言葉を使うのかしら。真面目な人だこと。
「ちょうどよかったですね。閣下から戦が終わったとの知らせがありました。そうですね…何事もなければ7日後には凱旋されるでしょう。そのおつもりで準備なさっていてください」
「えっ…ヤーシュ様、帰ってこられるんですか!」
「ええ」
わあっ…!