モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)
第3章 勧誘
奈良坂視点
「ここに戻ってくる気はないか?」
会議室に連れて来たこいつ...明希と呼ばれていたな。さっきは進と言う人の事を知っていたし、今は城戸指令から戻ってくるよう言われている。「戻ってくる」と言うことは、以前ここにいたのか?
「...それに答える前に、こちらからも聞きたいことがあります。その答えによっては戻る事を検討します」
「良いだろう。聞きたいこととは何かね」
肝が据わっているのか慣れているのか知らないが、落ち着いて話をしている。
「迅悠一という人物を探しているんですが、ご存知ありませんか?」
明希と呼ばれた女子から出た名は玉狛支部所属の迅さんだった。存在事態が機密のようなあの人を何故知っている。
「迅だと?何故お前が迅を探している」
「僕にとって大切な人で、心の支えだからです。その口ぶりだと、悠一は生きててボーダーにいるように聞こえるんですが?」
「迅はいるぜ。俺ら玉狛のとこにな」
林藤支部長が居場所を話すと、城戸指令から「余計なことを」と睨まれていた。対する林藤支部長はどこ吹く風という風に流している。
「悠一に会わせてください」
「会ってどうする気だ」
「会って、確かめたい。林藤さん達が嘘ついてないのはわかります。でも、直接会って確かめたいんです。もう何年も会えてないんです。お願いします」
そう言って深々と頭を下げる。
俺にはそこまで出来るほどに大事な奴はいない。親しい友人や家族でも、恐らくここまでの事はしないだろう。
この子と迅が何がどう言った関係なのか知らないが、それほどに大事な存在なら会わせてやるのが良いと思えてきた。
「...林藤支部長」
「分かりましたよ。城戸さんも明希には甘いねぇ~w」
「黙って早く呼べ」
「はーい。明希、今呼ぶから待ってろよ」
林藤支部長が席を立って廊下に出る。道中、横を通りすぎるときに優しく頭を撫でて行く。
「ありがとうございます!」
顔を上げて感謝を述べたこいつの表情は、凄く歪で、それでいて凄く嬉しそうだった。
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迅さんが来る前に俺達は部屋を出た。最後まで残って話を聞きたかったが、防衛任務が入っている。任務を疎かにするわけにはいかないので、後で本部長に聞こうと決める。