第7章 6day
力任せに兄と呼ぶ男を押し退けはトラファルガーの後ろへと避難した。兄は不満の色を隠さずトラファルガーへと向ける。
「…お前は何者だ?が連れて来たのか?」
「あぁ。おれは海賊だ。」
「!!天界に海賊なんて連れて来てどういうつもりだ!やっぱり脅されてるのか!?兄ちゃんの方に来なさい!」
「違うよ!!ローも黙ってて下さい!」
は今までの経緯を1から説明していった。島から飛び出した事、ヒューマンショップや海賊に捕まった事、逃げ出した先で彼に出会い、そして惹かれた事…。
全てを聞いた兄と呼ばれた男は悩ましげに頭を掻いた。
「はぁ……とりあえず、妹を助けて貰ったことには礼を言う。オレは兄のユア。」
「…トラファルガー・ロー。外科医であり海賊だ。」
「悪いがは天界に残してもらうぞ。」
「断る。コイツは自分の意思でおれについて来る事を選んだ。返すつもりはねェよ。」
「あのなぁ…お前ら知らないのか?」
「……何を?」
問い掛けの意味を理解出来なかったは小首を傾げた。知らないとは、一体なんの事だろうか。
「人間と恋なんてすりゃ堕天するぞ。ガキなんて出来た日には2度と天界は戻れねぇ。」
「…え、そう…なんだ。」
「当たり前だろ。おれたちはただの空島の住人じゃなくてれっきとした天使だ。人間との恋なんて実らねェし許され無い。お前は天に昇ってきた魂を導く仕事もあるだろ。人間のガキを孕めば羽根は抜け落ちて二度と生えねぇ。この故郷を完全に捨てる事になる。大事な仕事もな。」
それは、知らなかった。今まで育ててくれた親も、愛情を注いでくれた兄も友達も全て忘れなければならなくなるなんて。
の心は少なからず揺らいだ。動揺し、トラファルガーの服の裾を掴む。するとそれに気が付いたトラファルガーはを見下ろして短く溜息を零した。
「…1人で行かせなくて正解だったな。」
「ロー…。」
彼の大きな掌が両頬を包む。無理矢理顔を上げさせられ視線が絡んだ。は大きな瞳をぱちくりとさせる。
「…寂しい思いはさせねェ。を捨てたりもしない。誰よりもおれがお前を大切にしてやる。だから今更迷うんじゃねェよ。」